あなたの若い日に(伝道者の書12章1節)
1 はじめに
「伝道者の書」は、人生について思い巡らしている書です。「エルサレムの王、ダビデの子、伝道者のことば」(1:1)と始まっています。「伝道者」とは、集会で教える教師、思慮深く知恵ある者のことです。具体的にはダビデ王の子ソロモン王のことばと考えられています。ソロモン王は当時の誰よりも知恵ある者と称えられていました(Ⅰ列王4:29~)。それだけでなく栄華を極めた王でした。そのソロモンが人生について考えます。
皆さんも人生について考えることがあるでしょう。苦しいこともあるけれど人生って素晴らしい!いや、人生とは重い荷物を背負って坂道を登るようなものだ。どうせなるようにしかならないよ。いやいや、なるようになるから大丈夫。神がおられるならなぜ…。不公平だ。たった一度の人生なのだからくよくよせずに生きよう等。人生についていろいろな思いを持つでしょう。ソロモン王も考えたのです。行きつ戻りつ思いを巡らします。ですからこの書は断片的です。そうなのですが、気づきを重ねながら一つの結論に達します。それが12章です。ソロモン王の思い巡らしを辿ってみましょう。
2 ソロモン王の思い巡らし
🔸人生の空しさ
知恵も栄華もあらゆるものに満たされていた王なのですが、「空の空、すべては空」(1:2)と始まります。
🔸空しさのわけ
知恵、快楽、成功、名誉、たとえ何を得たとしても、「すべての者が、同じ結末に行くことを知った」(2:14)。どのように生きようと、結局皆死んでしまうではないか。神抜きで人生を考えたなら、この結論に至る他ありません。
🔸神にあるいのち
「実に、神から離れて、だれが食べ、だれが楽しむことができるだろうか」(2:25)。そもそも私たちのいのちとは、神抜きでは成り立たないものであることを見出しています。
🔸人に与えられているのは、今を生きること
「見よ。私が良いと見たこと、好ましいことはこうだ。神がその人に与えた日数の間、日の下で骨折るすべての労苦にあって、良き物を楽しみ、食べたり飲んだりすることだ。これが人の受ける分なのだ」(5:18~20)。
🔸人は理屈を求める
今を生きる、だとしても人生の労苦や空しさがなくなるわけでwはありません。「神は人を真っ直ぐな者に造られたが、人は多くの理屈を探し求めた」(7:29)。なぜなのだろう、どうしてなのだろう、人は考え、分かろうとします。
🔸人はすべてを見極めることはできない
「…知恵ある者が知っていると思っても、見極めることはできない」(8:16,17)。これが人生の事実です。彼はこの事を繰り返し語っています。3:11,7:23,9:12,10:14、11:5。
🔸「しかし、人には拠り所がある」(9:4)
すべてを見極めることはできないけれど、人には拠り所がある。これもまた人生の事実です。その拠り所とは。彼は人生の結論に行き着きます。
🔸「あなたの若い日に、あなたの創造者を覚えよ」
今、神を覚えよということです。人生は偶然の連なりではありません。あなたの人生も神の意志と意図と愛によって始められた人生です。始めてくださった神は成し遂げてくださる神です。十字架の救いを備え、私たちに完全な赦しと救いを与えてくださる神です。この神を心に留め、この方を拠り所として生きましょう。今日がその日です。
(2023年9月17日 舘脇 暁美 師)