「罪の系図」に輝く救い主(マタイの福音書1章1節~17節)

1 ユダヤの歴史の中に生まれたイエスさま

マタイは、ユダヤ人の歴史がよく分かる系図から導入しました。ユダヤの歴史第1区分は、アブラムからダビデまでの14人です。この系図を見ると、たった一人の人から、一つの国を支配するする王国ができたことが分かります。第二区分は、ダビデ王朝の系図です。ユダヤ人にとっては栄光の歴史です。ですから、14人のことは、列王記や歴代誌などに記されています。第三区分では、バビロン捕囚によって、ソロモンが築いた神殿は崩壊します。この系図に出てくる最後の王は12節ヨシヤの子どものエコンヤです。13節のアビウデから後の名前は旧約聖書に書かれていません。ユダヤ人が力を失い、惨めな歴史の中で綴られていった系図です。イエスさまはユダヤの歴史の中に生まれました。マタイは、ユダヤ人の悲惨な状況にあるただ中でお生まれになったこのイエス・キリストこそ、ユダヤの王であることを示したのです。

2 預言の成就であるイエスさま

神さまは、アブラハム対する約束(創世記12章1~3節)を成就させます。アブラハムの子孫のダビデは王になり、その王朝は500年間栄えました。それだけではありません。アブラハムの子孫からアブラハムのをもっと大きな国民にするイエス・キリストが現れます。イエスさまを信じる者達は信仰によってアブラハムの子孫です。アブラハムの死後4000年たった今アブラハムの信仰の子孫が全世界にいるのです。さらに、神さまはダビデに対する約束(サムエル記第二7章12~14節)を成就させます。預言のとおりに、約500年間ダビデの子孫は国王として君臨しました。預言は成就したように見えます。その後、ダビデの王国は滅び、約500年間ユダヤの人々は他国に支配し続けました。しかし、ユダヤの人々は、ダビデの子孫から、再び王国を復興させる者、メシヤ、救い主である王が現れると信じていました。マタイは、「ついに、1000年前にダビデに与えられた預言が成就しました。その人こそイエス・キリストです。イエス・キリストが建てる神の王国こそとこしえまでも堅く建てられる王国です。」と示したかったのです。イエス・キリストの信仰の兄弟として、イエスさまを信じる私たち一人一人がその系図に加えられています。神さまの壮大なご計画の中に私たち一人一人も入れられているのです。

3 「罪の系図」から救い出すイエスさま

ユダヤ人の系図には通常女性は書き記されません。マタイが書いた系図をよくみるとこれまでの系図と異なる点が見えてきます。その代表的な系図が、3節のタマルです。タマルは自分の夫の父ユダをだまし、姦淫の罪を犯します。6節ダビデは、バテ・シェバと姦淫そその夫ウリヤを殺すという罪を犯します。この2つの記事から分かることは、マタイが記したイエス・キリストの系図は罪に汚れた系図であったということです。そして、その罪がどうにもならない、イスラエル民族が滅びに向かうしかないそのところに、イエス・キリストが誕生します。イエスさまは、人々を愛し、いやし、教え、その生涯の最後には、十字架によって私たちの罪をその身に引き受けてくださいました。イエスさまは、ユダヤ人の罪の系図から救い出すためにこの世に来られました。イエスさまが十字架において血を流してくださらなければこの罪の系図による滅びの歩みを止めることが出来ませんでした。マタイは、この系図をとおして、罪の系図の中に輝くイエスさまを示そうとしたのです。

私たちの生涯もこの罪の系図のように罪によって、ただ滅ぶしかない、どうにもならないものでした。しかし、この罪の場所に神さまの御愛に注がれました。イエスさまのゆえに私たちは罪の歩みから抜け出すことができます。私たちは救われました。マタイが示したこの罪の系図の中に神さまの私に対する御愛が示されています。イエスさまは、「罪の系図」に輝く救い主です。そして、私という罪人を救う救い主なのです。

(2024年3月24日 石原 俊一 兄)

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