使徒信条講解17 罪の赦し(エペソ人への手紙1章1~7節)

1 3つの罪の赦し

今日は、使徒信条の「罪の赦し」という一節から、お話をしたいと思います。まず、最初に、この「罪の赦し」が、聖霊を信ずという聖霊についての告白の中で、聖なる公同の教会、聖徒の交わりに続いている点に注目しましょう。聖霊の第一のお働きは、私たちに、罪赦された確信を与えるということです。そして、罪の赦しは、公同の教会、聖徒の交わりの土台でもあります。私たちは、罪赦されて、公同の教会の一員とされ、罪赦された者として、聖徒の交わりに加えられたのです。ここで、ハイデルベルク信仰問答の「罪の赦し」の部分には、三つの罪の赦しの側面が記されています。

①過去

すべての罪。私たちの過去の罪は、決して拭い去ることができません。三浦綾子さんは、「道ありき」の中に、こんなことを書いておられます。「わたしは、人間はそう簡単に過去の自分と縁を切ることのできない存在だと、つくづく思った。たとえ自分では一切の過去を断ち切ったと思うことはできても、自分が生きてなしてきたすべての行動は、決して消すことのできないもののように、改めて私は感じた。」しかし、その私たちの過去のすべての罪を、イエス様は、赦してくださるのです。

②現在

私が生涯戦わなければならない罪深い性質。過去の罪はすべて赦していただいたとして、今、私たちはどうでしょうか。その心の内側には、私たちが生涯戦わなければならない罪深い性質がなお、残っているのではないでしょうか。しかし、イエス様は、おまえには、まだ、罪深い性質が残っていて、まだまだだから、だめだとはおっしゃらないのです。まだまだである私の罪深い性質をも、もはや覚えようとはされないというのです。

③未来

決してさばきに会うことのないようにしてくださる。そればかりか、私たちは、その罪深い性質のために、小さな敗北をこれからもし続けていくどうにもならない者であるにもかかわらず、恵みによって、キリストの義を私に与えて、私たちが神の前に立った時、私がそこにいるのではなく、キリストの義を来た私が、否、キリストご自身が神の前に立っているかのように私を見てくださるというのです。それは、すべて、イエス様が、私の罪の身代わりに、十字架の上で、神の刑罰を受けてくださり、三日目によみがえってくださったからなのです。

2 罪を赦す

第2にお話をしたいことは、私たちが、その友や隣人の罪を赦すということです。イエス様が罪の赦しについて語る時には、いつも、私たちの罪が神様に赦されることと、私たちが友人や隣人の罪を赦すことが、表裏一体のように語られました。私たちの罪が赦されることも大変なことですが、私たちが、他人の罪を赦すということも、実は、とても難しいことなのです。

マックス・ルケードが書いた「グリップ・オブ・グレース」という本の中に、赦すということの難しさを教えるケビン・タネルという青年の話が出てきます。ケビンは、17歳の時、飲酒運転で、18歳の女性をはねて殺してしまいました。裁判の中で、彼女の両親は、彼に百五十万ドルの賠償請求をしたが、彼には、その金額を支払う能力がないため、賠償額はたったの九百三十五ドル。その代わり、ケビンは毎週金曜日に一ドルずつ、交通事故で、彼女が死んだ金曜日に家族に小切手を18年間送り続ける条件で、和解した。ところが、たった一ドルを送るだけなのに、ケビンはすぐ忘れてしまい、今まで、四度も彼女の両親に訴えられて裁判所に呼び出されている。そこで、ケビンは、彼女の両親に、19年分の金額をまとめて送金したが、受け取ってもらえない。彼女の両親が要求しているのは、お金ではなく、彼が毎週金曜日に1ドルを送るという贖罪行為なのです。私たちがケビンの立場だったら、どう思うでしょう。あるいは交通事故で娘を失った両親の立場だったらどう思うでしょう。

隣人の過ちを赦すということの土台は、まず、私たちが、自分自身のどうにもならない罪を神様に赦していただくという経験が不可欠です。私たちの人生には、怒り、憎しみ、悲しみ、絶望が渦巻き、とても赦すことができない事件に遭遇したり、人がいたりするものです。しかし、「赦せ」とは、主イエス様の命令です。私たちはそのご命令の前に、とても赦すことのできない、自分自身の心、心に生じる葛藤を経験し、「主よ。私にはとても赦せません。どうか、イエス様の十字架の恵みによって、私の心の隅々まできよめ、支配してくださり、赦すことができるように、助けてください。」という祈りをささげる以外に、方法がないのです。しかし、そのことを、イエス様は私たちの心に、聖霊によってなしてくださると信じて、「我は聖霊を信ず、・・罪の赦しを信ず」と告白するのです。

(2025年1月19日 木田 惠嗣 師)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です