主イエスの埋葬(ルカの福音書23章50~56節)

1 無名の弟子ヨセフ

今日、お話するイエス様の埋葬に、ヨセフという無名の弟子が登場します。彼は、ユダヤ人を恐れて、弟子であることを隠していた(ヨハネ19:38)のですが、イエス様の十字架の死を目の当たりにし、驚くような行動に出ます。1911年に起きた大逆事件で、幸徳秋水に連座して死刑となった大石誠之助という和歌山県の医師がいます。アメリカのオレゴン州立大学の医学部を卒業し、和歌山の新宮市で医院を開業。地元の人からは、貧しい人々からは、金はとらないというので、ドクトル(毒取る)大石と慕われていました。戦後、多くの研究者により大逆事件の解明がすすみ、宮下太吉・菅野すが・新村忠雄・古河力作以外は事件とは無関係で、大石誠之助らは冤罪事件の犠牲になったといわれています。新宮では「大逆事件の犠牲者を顕彰する会」が結成され、非戦・廃娼を唱えた人権の先駆者として新宮市議会で誠之助らの名誉回復宣言が採択されるなど活発な活動が行われています。当時、処刑された大石の葬儀を、富士見町教会の植村正久牧師が執り行いました。どれほどの勇気が必要だったでしょうか。ヨセフの人物、その信仰について学びましょう。

2 ヨセフの人物

①金持ち(マタイ27:57)。②有力な議員で、神の国を待ち望んでいた(マルコ15:43)。③りっぱな正しい人で、議員たちの計画や行動には賛成しなかった(ルカ23:51)。④弟子ではあったがユダヤ人を恐れて隠していた(ヨハネ19:38)。四福音書の記録を総合すると、このようなヨセフの人物像が浮かび上がってきます。ある人々からは、その中途半端な信仰が批判されるかもしれません。しかし、イエス様が最も身近に置かれた12人の弟子たちが、一人は裏切り、他の弟子たちはみな逃げてしまった時に、イエス様の埋葬という、大切な仕事を引き受けました。ヨセフは、イエス様のために、自分のために掘った新しい墓をささげました(マタイ27:60)

3 主イエスの埋葬の意味

①死の確証。使徒信条は、「十字架につけられ、死にて葬られ」と告白します。葬りは、イエス様の死の確証でした。神の御子の死は、私たちの罪の赦しです。神の御子の死は、私たちの永遠のいのちの保証です。②復活の道備え。ヨセフが、提供した墓は、イエス様の復活の場所として、記念される場所になりました。③ヨセフの悔い改め。イエス様の十字架での死が、ヨセフに大きな影響を与えたのであろうことは、想像に難くない。なぜ、反対だと言わず、沈黙していたのか。そんな反省がヨセフの心に生じたのではなかったでしょうか。ヨセフは立ち上がり、自分にできることをしました。

(2022年5月8日 木田惠嗣 師)

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