わたしだ。恐れることはない。(マタイによる福音書14章22~33節)

1 はじめに

今日の聖書の箇所は、「五つのパンと二匹の魚」をイエス様が祝福されて、5000人以上の人がお腹を満たした出来事のすぐ後の記事です。メシアを待望していたガリラヤの人達は、このパンの奇跡をされたイエス様こそ、ローマの支配から救い出してくれる王ではないかと感じていました。(ヨハネ6:15,16)そのような人の動きのある中でイエス様は、弟子たちを無理やり舟に乗り込ませました。イエス様は、ご自身と弟子達のことを祈るために山に登られました。

2 逆風の中で

舟に乗った弟子たちは、ガリラヤ湖を横切り向こう岸のベツサイダへ向かいましたが、逆風で湖の真ん中ほどで立ち往生してしまいました。プロの漁師もいましたが、向かい風と波に苦しめられました。苦しんでいる弟子たちをイエス様が山の上でご覧になっていて、湖の上を歩いて弟子たちの所に来て下さったのですが、その姿を幽霊と間違えてしまいました。弟子達は、ほぼ半日、風と波に悩まされ、疲労困憊の状態でパニックになっていたのではないでしょうか。近づいて下さったイエス様を幽霊だと言っておびえている弟子に、「しっかりしなさい。わたしだ。恐れることはない」と、すぐに話しかけられました。その、「わたしだ」は、まさに、そこにおられるイエス様が、神として力を持って臨んでいるよ、わたしはあなたと共にいるよと語っておられるのです。私たちも、この世の逆風の中にいる時、私たちを悩ませている大波を足の下にして、嵐のただ中に近づいてきて下さり、「安心しなさい。わたしだ。わたしはいる。恐れることはない」と語ってくださるイエス様です。

3 ペテロの失敗

先ほどのイエス様の言葉に対してペテロは、「主よ。あなたでしたら、わたしに命じて水の上を歩いてあなたの所に行かせてください」と言いました。多分イエス様を幽霊と間違えて、一番大声で恐怖の声を上げたのはペテロだったので、リーダー的存在のペテロは恥ずかしくなり、名誉を挽回するつもりでこんなことを言ったのではないかと想像します。周りの視線を気にする、いいところを見せようというペテロです。そしてペテロは水の上を歩きました。一心にイエス様を信頼し、イエス様のみ言葉を信じている時は水の上を歩いたのですが、イエス様から目を離し、強風を見て怖くなった途端に沈みかけました。ペテロは、自分こそはと自分を誇り過信し、自分の力に頼ってしまう自己中心な姿に気がつき、「主よ、お助けください」と叫ぶしかなかったのです。私たちがイエス様から目を離させるものに、自分を取り囲んでいる現状の厳しさ、周りの人の目、自分の心の中があります。イエス様は、沈みかけたペテロに「すぐに」「手を伸ばして」「捕まえて」くださいました。「信仰の薄い者よ」と言いつつ、弱い私たちを見捨てず、力強い手でしっかりとつかんでくださいます。

ペテロはこれからも何度も失敗をしますが、あわれみ深いイエス様は、見切らず、赦し、教え続け、共に生きてくださるのです。

(2023年1月22日 木田 和代 師)

 

 

 

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